ポルトガル人の道10  7月1日(金)  レドンデラ ー ポンテベドラ

 5月9日に家を出発して、とうとう7月になった。日本帰国まで1か月を切ったのでちょっと複雑な気持ちだ。朝飯はレドンデラのキッチンで昨日買っておいたボカディージョ(スペイン風サンドイッチ)半分とヨーグルト2個にプラム、オレンジジュースと至って健康的。
 スペイン人の朝は遅い。そんなに早朝でもないのに歩いている道筋には人影が殆ど見当たらない。静かでいいけど迷った時に教えてくれる人がいた方がいいな。


 町を抜けるとすぐ山道になる。車ならアクセルを少し余計に踏むだけで何てことなく上って行ける坂だが、歩きだとやっぱり坂はパワーが必要だ。前をコリアンの女の子が一人で歩いている。両足に湿布薬を貼っているので筋肉痛か!?いちいち言わないし聞かないから分からないが、みんな色々な故障を抱えながら歩いている。筋肉痛だけなら大した問題でないが、巨大なマメや膝や腰が故障すると大変だ。故障のお陰で巡礼を途中でリタイアする人が結構いるそうだ。


 大きな町の中に入り歩き続けて行くと、車1台がやっとという道幅の石橋が現れた。いつの時代のものだろう、相当な年代物だ。100m以上ある長い橋なのに一方通行でもないし交互通行のための信号機も備わっていない。見ていると、向こうから渡り始めた車があるとこちらの車は橋に進入しないでちゃんと待っている。当たり前だが車1台がやっとなので、それしか方法はないだろう。それにしてもこんなんでずっとやって来れたんだからスペインも暢気なもんだ。橋の古さから見て200年300年の話だろう。日本なら最低でも信号機を付けるか、隣に2車線の新しい橋を架けろと住民が騒ぎ出すところだ。それをせずに古い物を大事に生かす所にスペインの良さがあるのかも知れない。この国では効率はそれほど重要でないのだろう。でも、シエスタと日曜閉店だけは何とかしてもらいたいと思うのは日本人だからか。

 渡り終わったところに調度バルがあったのでコーヒーを飲んでいくことにする。そしたら小さなチュロスを2本サービスしてくれた。チュロスは食べたいと思っても中々機会がなかったのでこれは嬉しい。対岸からパラパラと渡って来るペリグリノを見ながらコーヒーを啜り楽しい時間だ。橋のたもとに青い服の女性ペリグリノが立っているが、この子達とは3日同じアルベルゲになり、この2日後に仲良くなるから縁とは不思議なものだ。3人グループで歩いており、みんなクール美人でちょっと近寄りがたい雰囲気があったのでこのときは想像もしなかった。

 町を過ぎるとまた山の中に入って行く。でも、この辺りは山越えと言うより丘越え程度なのでスタミナもそんなに削がれることはない。次の村に小さな教会があって、そこからアレハンドラ母子が出てきたので声を掛ける。彼女たちも順調に歩き続けていられるようだ。歩き始めて日が浅いママの足は大丈夫かね?アレハンドラとは足掛け6日間一緒になったが、この後もう会うことはなかった。


 11:45、目的の町のポンテベドラ到着。道の反対側に私営アルベルゲが見えたので、公営はどこかなと思ったら、こちら側の高台にあった。既にマツコと背中タトゥーの子が到着していて、広げた寝袋の上で寛いでいる。私に気づいたら座るスペースを空けてくれたが、とりあえずビールが飲みたいので、バックパックはここに置かせてもらい近くにある駅に行ってみる。普通、駅にはKIOSKがあるかと思ったが、この駅にはなかった。駅前にもスーパーは見当たらないので、私営アルベルゲ兼バルをやっている店まで通りを越えて行ってみる。小さなタパス(小皿料理)が付いてビール1杯が1.7ユーロ、円なら200円ほどで突き出し付きでビールが飲めるのだから呆れるほど安い。一緒に朝の残りのボカディージョ半分を食べる。アルベルゲの前に戻ってきたら、昨日、ワインをご馳走したカップルも到着して寝袋の上で寛いでいた。

 1時になったところでチェックイン開始。いつものように6ユーロだ。ここは公営だがガリシア州なのにキッチンが使えた。鍋、フライパン、皿、コップ、ナイフ、フォーク、スプーンと一通り揃っていたので感激。ただ、オリーブオイルや調味料がないのが残念かな。でもこれだけあればスーパーで冷凍の米を買うことが出来れば念願の米が食べられる。Wi-Fiはやっぱり使えないタイプだったがキッチンが使えるのでガリシアにしてはマシな方だ。いつものようにシャワー、洗濯のルーチンをこなす。

 ここの庭には地元のおばさんに水を恵んで貰っているペリグリノの像があった。建て物も豪華だし、こんなブロンズ像まで設置できるなんて凄い財力だなぁ。どこから資金が出ているんだろう。やっぱりガリシア州?

 レセプションに行ってスーパーの場所を教えて貰う。ちょっと歩くが立派なスーパーがあった。行く途中、またレジ袋を持って来るのを忘れたことに気づく。習慣になっていないので何度やっても忘れてしまう。スーパーにはお目当ての冷凍ごはんがあった。それに1リットルビール、ヨーグルト4、バケットパン、チーズ、トマト2で7.35ユーロ。2食分で約900円なら安いもんだ。帰る途中、やっぱりスーパーにやって来るペリグリノとすれ違って挨拶する。アルベルゲの目の前にはバルがあるが、そこでは食べないでみんなせっせと節約している。

 さて、冷凍の米だが、だいたいこれらは1袋に2食分入っている。いつもこの位は食べてしまうので今回も一遍に食べることにする。キッチンにオリーブオイルが有る所ではフライパンでやったこともあるが、今回はレンジでチンだ。最初に6分やってみて様子を見ながら2分を2回やったら食べ頃になったようだ。皿に広げた状態で何度もやったので水気も飛んで調度いいかも。至福の米食タイムの始まり。

 サンチャゴが近づいて来たのでバケーションを利用した若者が一層増えてきたようだ。連中を見ると大人数でワイワイ賑やかなレクリエーション気分なので違和感を感じ、年配者を見るとほっとする。

 あと数日でコンポステラに到着するので、改めて今後の長期予想を立ててみる。マドリッドに予約してあるオスタルの日が動かない基準だ。そこから逆算すると残りの使える日数が出てくる。17日間、これが自由に変更可能な日数なので、まずあと4日後にコンポステラに到着。すぐイギリス人の道を歩き始めて121kmを6日で歩ききったとしてマドリッド移動日まで8日間残っている。フィステラへは5日間で到着、残りは3日しかないのでムシア行きは諦めるしかなさそうだ。その代り、フィステラかコンポステラで2泊してゆっくり調整できる。これで行く。

 明日の予定をざっと立ててみる。宿泊地の第一候補はBriallosで、そこでアルベルゲがタイミング良く見つかったら宿泊。泊まれそうでなかったらカルダスデレイスまで歩く。距離的にはBriallosが手頃なのであるといいな。


ポルトガル人の道11へつづく